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産婦人科と血栓症の関係について 抜粋・引用 |
血栓症は日本ではこれまで比較的まれであるとされてきた。 それが生活習慣の欧米化等に伴い近年急速に増加している。 血栓症で臨床的に問題となるのは、深部静脈血栓症とそれによっておこる肺血栓塞栓症です。 肺血栓塞栓症は深部静脈血栓症の5〜10%に発症する疾患ですが、 一度発症するとその症状は重篤であり致命的となるので、急速な処置が必要となります。 妊娠中は血栓の発症率は非妊婦と比べて5倍以上も高率であるといわれています。 また婦人科手術は骨盤内操作が多いため一般外科に比べて血栓症は高率です。 産科領域において血栓症の頻度は0.1〜2.0%と報告されいますが 妊娠中より産褥期には多く発症します。 帝王切開では経膣分娩に比べ7〜10倍も高率となります。 血栓症のやく4〜5%が肺塞栓症につながるといわれ肺塞栓症は発症すれば きわめて重篤であり、最近では妊産婦死亡の10%以上を占めています。 婦人科特有の疾患として巨大子宮筋腫手術、卵巣ガン手術、子宮ガン手術、骨盤内高度癒着の手術、 卵巣過剰刺激症候群、ピル服用者などがあげられます。 産科特有の疾患として高齢妊娠、重度妊娠中毒症、前置胎盤や切迫早産による長期ベッド上安静、 常位胎盤早期剥離、帝王切開術、著名な下肢静脈瘤などがリスク因子となります。 血栓症の診断 症状は下肢の浮腫、腫脹、発赤、熱感、圧痛などです。 手術後24時間以降、多くは離床し歩行開始した術後2〜3日に症状が出現します。 肺塞栓症の診断 臨床症状として最も多いのは突然発症する胸部痛と呼吸困難ですが、 軽い胸痛から血痰やショックを伴うものまで多彩です。 血栓症の予防は肺塞栓症の予防につながります。 一般的予防法は手術後全例に行うことが望ましいのですが 早期離床、下肢の挙上、マッサージ、足首の背屈運動、 充分な補液:1日1.500〜2.000mlが必要です。 |
新聞より抜粋2000.2.2 「肺動脈に血栓」突然死2.8倍(最近10年間で約3倍に急増) 手術は成功したのに患者は死亡 肺塞栓症死者急増 病院、薄い危機意識 原因となる肺塞栓症が急増する一方で、医療機関の認識が希薄で、 予防措置をせず、無防備な状態で行われる手術が多い。 東京都調布市の会社員は出産したばかりの妻を亡くした。 帝王切開で男児を産んだ翌日、病室で赤ちゃんを初めて腕に抱いた直後、呼吸が停止。 血栓が肺動脈に詰まる肺塞栓症だった。 この疾患は帝王切開の後や、高齢者や肥満体型の人が手術を受けた時に起こりやすく、 フィルターを血管に入れ、血栓が詰まるのを防いでいる病院もあるが、 妻の死後、担当医は夫に「予防法は知りませんでした」と告白した。 夫は「妻は死なずに済んだのではないか」と唇をかむ。 欧米では、手術時の肺塞栓症の予防策が広く行われており、 予防措置をせずに発症、死亡した場合、医師は賠償責任を問われることが少なくない。 一方、我が国ではこの疾患を巡る訴訟は、少なくとも7件で判決がでているが、5件は原告敗訴。 日本の医療機関ではいまだに予防対策が普及していず、それが一般的と見なされていることも背景とみられる。 対策の遅れの一つとして「日本ではまれな疾患」と考える医師が多く、関心が低いことにある。 だが厚生省人口動態統計は、「この認識を改める必要」を医師たちに迫っている。 |